第6話
金曜日の余白
金曜日の朝、目覚まし時計の音で起床した時刻は、この一週間で最も早かった。いつもより30分早い。理由は特にない。ただ、目が覚めてしまったのだ。
以前の自分なら、その時点で二度寝を選んでいた。今朝も一瞬そう考えたが、やめることにした。既に脳は覚醒していて、無理に眠ろうとすることの方が、かえって疲れを呼ぶ気がした。
ベッドから出て、いつもより余った30分をどう使うか考える。コーヒーを淹れ、窓から外を眺める。まだ薄暗い街の風景。この時間帯は、これまで見たことがなかった。会社に着いて同僚と雑談しているうちに、その時間は消えていく。だから、この景色との向き合い方自体が新しい経験だった。
上司の言葉が頭をよぎる。「提案の質が上がっている」。自分は戸惑っている。朝の充実が仕事に繋がるという構図は、一般的すぎて、逆に信じ難い。健康診断の結果から始まった早起きの試みは、あくまで個人的な義務感だった。それが職場での評価にまで影響するとは。
コーヒーを飲み終わると、いつもより30分余裕のある朝は、もう終わりに向かっていた。準備を整えて家を出る。通勤電車の中で、金曜日特有の疲れが身体に溜まっていることに気付く。一週間を走り切った感覚。だが同時に、この疲れの質が、先週のそれとは違うような気もした。
会社に着いて、デスクに向かう。朝の余白は、既に日中の忙しさに飲み込まれつつある。ただ、昨日のぼんやりとした思考の時間が、今日の仕事にどう影響するのか。その答えが出るのは、もっと後のことになるのだろう。
金曜日の夜。一週間を通して、朝に費やした時間の総量は、予想より大きな変化をもたらしていた。だが、それが続くのか、本当に良い変化なのか、まだ判断する段階ではない気がしている。むしろ、来週をどう過ごすかの方が、今の自分には重要な選択肢に思えた。
続きはまもなく
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