第2話
第2話 三週間目の朝
朝、水を飲む。それだけの習慣が、気がつけば三週間続いていた。
最初の一週間は意識的だった。寝ぼけた頭で「今日も飲もう」と自分に言い聞かせ、キッチンへ向かっていた。二週目は、その行動が日常に溶け込み始めた。アラームで目が覚めると、体が自然と動く。三週目の今、朝の水はもはや「やること」ではなく、「朝の一部」になっていた。
この小さな変化が、ほかのことも少しずつ変えていった。
水を飲むついでに、居間のカーテンを開ける。朝日が部屋に入る。体重計に乗る。キッチンに立って、昨夜の残り物ではなく、卵とパンを用意する。五分では終わらなくなっていたが、それでも十分程度。無理なく続く範囲だ。
今朝も、いつもより目覚めがすっきりしている気がした。昨日も、その前の日も、同じ時間に寝ている。朝の儀式が定着したせいか、夜も自然と早寝になっていた。
スマホを手にすると、習慣管理アプリの通知が来ていた。「21日連続達成」という表示。三週間という数字を目にして、初めてその重みを感じた。以前なら三日で諦めていた自分とは違う。
ただし、浮かれてはいけない。ここから先が本当の試練だ。四週目、五週目と続けていく中で、モチベーションが落ちる日が来るだろう。疲れた朝、仕事が重い日、何もかもやる気が出ない時期が。
水を飲み終わると、ふと思った。次は何を加えようか。医者に勧められたことをすべて一度にやらず、今度は別の五分を足してみるか。それとも、この水を飲む習慣をさらに磨いていくか。
判断は急がなくてもいい。今朝も、明日の朝も、水一杯の先にあるもを少しずつ見つめていく。そういう進み方もあるのだと、このところ気づき始めていた。