期限という名の怪物

2/2

第2話

第2話 時間を逆算する習慣

赤い数字を見ながら、私は初めて「逆算」という言葉を意識した。

締切に向かって時間が減っていく。これまでずっと、そう感じてきた。3日残されている、2日になった、あと24時間——常に失われるものとして時間を数えていた。

でも、もし逆に考えたら?

ノートパソコンの画面から目を離して、デスクの片隅に置いたアナログのカレンダーに目をやった。手書きで案件ごとに色分けした小さなカレンダー。

「ウェブサイトのリデザイン、あと3日」ではなく、「完成から逆算すると、今日から何をすべきか」。

その瞬間、脳の働き方が変わったような気がした。焦燥感は変わらない。けれど、その焦燥感の質が微妙に違う。前へ押し出される感覚から、むしろ自分が主導権を握って時間を配分する感覚へ。

試しにやってみることにした。3日で完成させる案件を、作業フェーズごとに分割してみる。スケッチに6時間、構成案に8時間、デザイン制作に16時間、修正に6時間。そうするともう36時間必要だ。つまり実質1日半しかない。ならば修正の時間をもっと確保するには、スケッチと構成で失敗しないことが必須。

そこまで見えると、今やるべきことがはっきりした。完成図を想像してから動く。手を動かす前に、頭を動かす。

コーヒーは冷めていた。淹れ直そうと立ち上がったとき、スマートフォンが鳴った。新しい案件だ。「急ぎめでお願いしたいのですが」というメッセージ。

相変わらず締切は容赦ない。だが、今朝の視点の転換は、その重圧の形を少しだけ変えた。焦燥感はまだそこにあるが、それに支配されるのではなく、対話する道が見えた気がする。

この工夫が、本当に機能するのかはまだわからない。だが、少なくとも昨日までの「ただ走る」という状態からは、一歩踏み出せたような気がした。

続きはまもなく

目次

コメント