期限という名の怪物

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第1話

第一話 赤字で埋まる

朝目覚めると、スマートフォンの画面に赤い数字が並んでいた。クライアントからのメール、案件管理アプリの通知、カレンダーアプリの警告——すべてが「あと3日」と主張していた。

私は布団の中で溜息をついた。こんなの毎日だ。デザイナーという職業を選んだことを、改めて後悔する。いや、違う。後悔じゃなくて、この緊張感に何年も慣れているだけなんだ。

コーヒーを淹れながら、今月の案件を頭の中で整理する。ウェブサイトのリデザイン、SNS用のグラフィック、ロゴ案出し。それぞれに色分けされた付箋が脳内のホワイトボードを埋めている。どれから手をつけるべきか。いつもこの判断が一番疲れる。

ノートパソコンを開く。そこには昨晩の作業途中のファイルが。背景色がまだ決まっていない。フォントサイズも微妙だ。でも今日は別の案件に集中しなくちゃいけないんだ。目の前の締切を優先する。それがこの世界のルール。

ふと思う。締切って、本当に必要なのかな。もちろん、ビジネスとしては必要。クライアントも待ってるし、プロジェクトも進まない。でも、締切がなかったら、もっと違うものが作れるんじゃないか。もっと納得いくまで試行錯誤できるんじゃないか。

そういう考えを持ち始めると、仕事が苦しくなる。だからいつも、そこまで考えないようにしてきた。ただ、作る。締切までに間に合わせる。それだけ。

けれど今朝は、なぜか違った。赤い数字を見ながら、逆に考えてみることにした。もし、この締切を敵だと思わなかったら。ただの「区切り」として受け入れたら。

スケッチを取り出し、ペンを握る。3日ある。短いようで、案外長いかもしれない。その時間の中で、何ができるか試してみようか。

続きはまもなく

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