第5話
選択が積み重なるとき
活を見つめることでもあったのだと。
オフィスに戻った主人公は、デスクの上を見渡した。ペンスタンドの中には、インク切れのボールペンが3本混じっている。書類の山の奥には、去年の名刺が眠ったままだ。PCのデスクトップには、もう開かないフォルダが20個以上ある。
すべてが「いつか使うかもしれない」という先延ばしされた判断の結果だった。
そこで初めて気がついた。朝のクローゼットでの迷いは、衣服の問題ではなく、判断そのものへの疲れだったのだと。毎日、意識せずに選んでいた無数の「何か」。その積み重ねが、どれほどの重さになっているのか、計ったこともなかった。
主人公は、ペンスタンドから使えないペンを取り出し始めた。動作は単純だが、その瞬間、何かが変わった。ゴミ箱に落ちるペンの音が、妙に耳に残った。
「本当に必要なものって」と、呟きながら、次の引き出しに手を伸ばした。
同僚が話しかけてきた。会議の時間だという。主人公は立ち上がり、その片手に握られたペン—本当に必要だと判断した、たった1本のペン—を持って、会議室へ向かった。
その途中、ふと思った。明日は、グレーのコートを選んでみようか。
そう決めることが、どうしてこんなに軽く感じるのだろう。もしかして、これが「選ぶ」ということなのだと、初めて理解したような気がした。
続きはまもなく
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