副業エンジニアの試行錯誤

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第8話

第8話 「作らないこと」を選ぶ

アンケート結果の前で、私は3日間考え続けた。

本業での経験を思い出すと、プロダクトマネージャーたちが口にしていた言葉がある。「スコープを絞ることが、最高の意思決定だ」と。その時は理解した気になっていたが、自分のツールの前では意味が違って響いた。

ユーザーが求めていることは明確だった。複数プロジェクト管理、更新通知、共有機能。全部足したら、確実に「小さなツール」ではなくなる。本業との両立は難しくなるだろう。

だが同時に気づいたことがあった。アンケートに答えてくれた人たちは、私のツールを使い続けてくれている。完璧ではないまま、何かが役に立っているらしい。その小さな信頼を失うより、今、正直になることの方が大事かもしれない。

私は決めた。当初の計画を貫くのではなく、今のツールの形をいったん確定させることにした。詳細版と簡潔版の機能は、シンプルなまま残す。その代わり、ユーザーからの声を聞く「仕組み」を作る。月に一度の簡単なアンケートと、メール一本で直接連絡できる窓口。

複数プロジェクト管理や共有機能は、別のタイミングで考える。あるいは、他の誰かが作るかもしれない。それでいい。

本業のプロジェクトでは、完璧を目指してスコープが膨らみ、結局遅延することもある。でも副業だからこそ、違う選択ができる。完璧さより、続けることを選ぶ。小さく始めて、ユーザーの声を聞きながら、ゆっくり育てていく。

収益化のことはまだ先でいい。今は、自分たちが作り続けられるペースを見つけることの方が、ずっと大事な気がした。

(完)

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