第2話
シンプルなアプリと、複雑な自分
翌朝、通勤電車の中で家計簿アプリを開いた。
朝食代、コーヒー、昼食。夜中のコンビニ。帰りに立ち寄ったドラッグストア。一つひとつ入力していくと、昨日一日だけで5,000円近く使ってることに気づいた。
5,000円。給料日前の身で、毎日これを繰り返してるわけだ。計算すると怖くなるから、普段はしない。でも今、数字として目の前にある。
シンプルなアプリだからこそ、入力が淡々と進む。凝った機能もグラフも診断もない。ただ、使った金額の記録が積み重なっていくだけだ。その単純さが、逆に妙にリアルに感じた。
会社の先輩の言葉がよみがえる。「そこじゃないんだよ」。
多分、アプリの良し悪しじゃなかったんだ。何千個もある選択肢を前にして、「完璧なツール」を探してた。でも、そもそも自分は何を知りたかったのか。毎月お金がどこに消えるのか。それだけだったはずなのに。
3日で飽きた4個のアプリ。あれは、入力という「作業」から逃げるためのツール選びだったんじゃないか。と、自分で思い当たる。
シンプルなアプリは、逃げ場がない。毎日、この手間から目をそらせない。その手間こそが、「自分のお金との距離」なんだと気づかせてくれる。
一週間続けられるか。その先は、わからない。でも今夜、家に帰ったら、今月ここまでの支出を全部入力し直してみようと思った。見たくない数字も含めて。
続きはまもなく
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