第8話
ゲーム世界の先へ
光が収まった時、スマホの画面には四つの世界が映っていた。
ファンタジーRPGの城塞都市。謎解きアドベンチャーの密室。スポーツゲームのスタジアム。恋愛シミュレーションの学園。それらが立体的に絡み合い、一つの風景になっている。
メッセージが浮かぶ。
『融合完了。あなたたちの困難は、ここで初めて同じ重さで存在します』
スマホを持つ手が震えた。同じ重さ。つまり、俺の罪悪感は独りよがりなものだったのか。Player_02の葛藤、Player_03の迷い、Player_04の後悔。それらと並べた時、初めて俺の『積みゲー』という悩みの本当の形が見える気がした。
ゲームを買い続けた理由は、逃げだけじゃなかった。もっと先へ行きたいという欲望があって、でもそれを認めるのが怖かった。だから積み重ねることで、自分の本気から目を逸らしていたんだ。
画面に新しい選択肢が現れた。
『ここからは、誰かのためではなく、自分のために進みますか?』
俺は笑った。そして『はい』をタップした。
机の上のゲームケースが、一つずつ手に取れるようになった。ケースは温かく、軽い。それぞれが物語ではなく、可能性になっていた。
前から遊びたかったのに後回しにしたゲーム。最後まで遊びきれなかったゲーム。新しく買ったゲーム。どれもが『今、ここから始める権利』を与えてくれている。
アプリはいつの間にか消えていた。必要なものはもう、スマホにはない。
俺はゲームケースを一つ手に取った。ファンタジーRPGだ。もう一度、城塞都市へ向かおう。今度は、逃げてじゃなく。
新しいゲームを始めるのと同じくらい、積み重ねたゲームを続けることは勇気がいる。だが、その勇気が、現実を変えるんだと思えるようになった。
(完)
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