第5話
三日目の重さ
木曜日の朝、昨日と同じようにスマートフォンを手にした。しかし今度は、その画面を開く前に、冷蔵庫に何が残っているかを確認する自分がいた。習慣とは、こうした順序の入れ替わりなのかもしれない。
野菜は昨日より少ない。それでも、工夫のしようはある。朝の数分で、今日の食事の輪郭が頭のなかに浮かぶようになっていた。この変化は、思っていたより早く訪れた。
ところが仕事の途中、予想外の打ち合わせが入った。終業時間が一時間延びることが確定した瞬間、あの誘いが再び顔を出す。駅前の店の暖かい灯り。スマートフォンで検索する指の軽さ。便利さへの記憶は、まだ新しく、強い。
迷いながらスーパーに向かった。いつもの棚で、いつもの動きで、野菜とタンパク質を手に取った。昨日までとの違いは、その時間軸だ。いつもより十五分遅い買い物は、売り場の様子をいつもと違う角度から見せてくれた。売り尽くされた棚。整理し直される商品。そうした変化のなかで、予定していなかった食材に目が止まることもある。
帰宅して調理を始めたとき、疲労は昨日とは別のかたちで体に刻まれていた。頭は疲れているのに、手は昨日の流れを覚えている。その矛盾のなかで、食事を作ることの意味が、少しだけ見えた気がした。
食卓に向かう前に、ふと考える。もしこの三日間の試みが、単なる新鮮さによって支えられているだけなら、どうなるだろう。一週間目、二週間目には、飽きや疲労が襲ってくるのではないか。
小皿の野菜を前に、問い続けることの必要性を感じた。習慣は、始めることより、続けることで本当の姿を現す。その試練は、まだこれからだ。
続きはまもなく
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