はじめてのフットサル

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第8話

第8話 コートの外へ

笛が鳴った。試合終了だ。

スコアボードを見ると、結果は変わっていなかった。負けていた。だが、誰もがコートから歩み出るとき、その足取りは軽かった。

「お疲れ様でした」と相手チームの選手に握手を求められたとき、自分の手には確かな充足感があった。勝敗とは別の何かが、ここに存在していた。

ベンチに戻ると、田中が肩を叩いてきた。「良かったな。最初の試合との違い、感じた?」

感じていた。走っているだけだった自分が、いつの間にか、相手を読み、仲間を探し、その一瞬先を意識していた。ボールの流れの中に自分たちが存在し、その流れを少しずつ変えていく感覚。

「フットサルって、こういうゲームなんだ」と呟くと、田中は笑った。「そう。広いコートより、ここは駆け引きが詰まってる。だからハマる人が多いんだよ」

シャワーを浴びて、コートを後にした。夜の街は冷たかったが、体の芯には温かさが残っていた。

帰宅してから、ふと思った。あのコートには、また行きたいと思う自分がいる。来週も、その次も。運動経験のなさは言い訳にはならないのだと気づいた。大事なのは、その場にいることへの意志だったのだ。

スマートフォンの連絡先を開き、田中にメッセージを打った。「次も誘ってもらえますか?」

返信は即座に来た。「もちろん。待ってた」

コート上の限られたスペースは、それでも無限の可能性を秘めていたのだ。

(完)

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