オートメーションの境界線

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第3話

自動化と判断の間に

佐藤は深く息をついた。田中の質問は、この数週間、彼が何度も自問してきたものだ。

「その線引きが、実は業務の内容ではなく『不確実性』にあるのではないか、と考えています」と佐藤は答える。「返品の件もそうですが、顧客の真の要望が最初から明確に言語化されているケースは意外と少ないんです」

営業の鈴木が頷く。「そう。電話で『返したい』と言う人の半分以上は、本当は返品じゃなくて『こういう使い方もあるのか』と知りたかったりする」

「その『本当は』を引き出す過程こそが、自動化しにくい部分だと思うんです」と佐藤。「AIエージェントは、明確に定義されたルーチンを完璧に実行します。けれど、問題の定義そのものが流動的な場面では、その完璧さが逆に障害になる可能性がある」

田中はノートに何かメモを取る。「では、実務的には。例えば最初の接触や初期ヒアリングは人間が、ルーティン化した後処理をAIが、というような棲み分けですか」

「理想的にはそうですが」佐藤は前置きして、「ただ、その境界も固定的ではないような気がするんです。同じ返品相談でも、その時々で『自動化できる相談』と『判断が必要な相談』が混在している」

会議室の空気が変わる。これは単なる業務設計の問題ではなく、むしろ組織が『判断』をどこに集中させるのかという経営判断でもあるのだ。

「それなら」と営業企画の山口が切り出す。「試験的に、特定の相談パターンについて『自動化vs人間判断』の結果を比較してみるというのはどうでしょう。データが出れば、どこに投資すべきかも見えるかもしれません」

田中と佐藤の目が合う。その提案の背後には、より大きな問いが隠れていた。技術導入が進む中で、組織はどうやって『人間にしかできないこと』を発見し、守り、育てていくのか。その方法論は、誰ももまだ確実には持っていないのだ。

続きはまもなく

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