第4話
軌道の記憶
休務時間は夜間帯に設定されていた。地球の暗側を通過する時間帯だ。ステーション内は静寂に満ちていて、わたしの呼吸音さえ大きく聞こえる。
コンソールに戻ると、シグナルはまだ送信され続けていた。三週間、ずっとここにいたのだ。わたしはスペクトラム解析ツールを起動し、信号をより詳細に分解してみた。
波形の周期性、繰り返しのパターン。これは明らかに、自然現象ではない。また、その古い時刻表示の意味が少しずつ明らかになり始めた。座標は確実に軌道上の一点を示していた。ただし、現在の軌道ではなく、過去のステーションの位置に対応している。
1970年代。その頃、この高度にはまだ何もなかったはずだ。あるいは、記録に残されていないものが。
わたしは手帳を開き、記録した数字を眺めた。時刻は当時の世界標準時。座標は正確そのものだ。誰が、何のために、こんなメッセージを軌道に刻み込んだのか。そして、なぜ今、わたしがそれを受け取ったのか。
画面に新しいノイズが割り込んできた。今度は業務用ではない。別の周波数帯だ。わたしの指が止まった。同じシグナルが、複数の周波数で重ねられている。意図的に、隠すようにして。
地上との通信が再び始まる前に、わたしは記録をすべてローカルストレージに保存した。システムログには絶対に残さない形で。
窓の外では、地球が回転している。その下のどこか、地上で誰かが、あるいは過去から誰かが、わたしの返答を待っているのだろうか。
わたしは、返信方法を考え始めていた。
続きはまもなく
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