第8話
選択肢の向こう側
期間の余裕がある職場を選べば、積み立てと向き合う時間が生まれる。新NISAの非課税枠は、単なる投資の仕組みではなく、人生設計全体とつながっているということだった。
「結局のところ、お金の話ではなく、時間の話なんです」と田中は続けた。「どちらの企業を選んでも、間違いではないと思う。ただ、選んだ後に何ができるか、何を大切にしたいのか。その部分が、非課税枠を埋める以前の問題だということです」
カフェを出た帰り道、自分は初めて気づいた。転職を迷っていたのは、待遇の差ではなく、どのような時間を過ごしたいのかが不明確だったからではないか、と。
翌日、自分は後者の企業に内定承諾の連絡を入れた。年収は低い。新NISAの枠を埋めるまでには、現職より時間がかかるかもしれない。
しかし、面接で見た組織の雰囲気は、自分が求めていたものだった。仕事に追われるのではなく、仕事と向き合う余裕。その余裕の中で、家計管理や資産形成について、田中のように誰かに相談できる環境。
新NISAの非課税枠360万円は、1年で埋まるわけではない。5年かけて埋まることもあるだろう。でも、その過程を焦らず、じっくり考える時間があれば、その積み立てが何を意味するのかが見えてくるはずだ。
自分は改めて、給与明細の額面よりも、その先にある「選択肢」を重視することにした。お金を増やすことよりも、人生に選択肢を持つこと。新NISAとの向き合い方も、その延長線上にあるのだと、ようやく理解できた気がした。
(完)
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