観測者たちの季節

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第7話

非公式な問い合わせ

会議室の入口に着いたとき、すでに六人ほどが集まっていた。ほぼ全員、今年度の評価面談を終えたばかりの表情をしていた。佐藤が軽く手を挙げ、私たちの到着を示す。誰かが無言でコーヒーのカップを指し、飲むか問う仕草をした。

席に着くと、室内の空気が不可解な重さを帯びていることに気づいた。これは異議を唱える集会でもなく、かといって単なる雑談でもない。むしろ、皆が同じ違和感を抱いており、その違和感を言語化しようとしている段階に見えた。

「評価というのは、本来、測定可能なものに基づくはずですよね」と、分析化学が専門らしい女性が切り出した。「だけど、面談の内容を振り返ると、評価者たちも何を測定しているのか、明確にしていないように思えるんです」

田中が頷く。その頷き方は、廊下での彼の沈黙の延長線上にあるようだった。

「翻訳の話に戻ると」と田中が慎重に言葉を選びながら述べた。「原文から訳文への変換過程で失われるものがあるように、研究の成果も、評価という言語系へ翻訳される際に、何かを失っているのではないか。その喪失が、果たして不可避なのか、あるいは方法論の問題なのか」

しばらく沈黙が続いた。窓の外では、金曜日の夕方の光が建物を柔らかく照らしていた。

佐藤が重ねて言う。「個々の成果を数値化することは可能です。ですが、そこに映らない営為もある。それを、どう考えるか、という問いですね」

その言葉が落ちたとき、私は気づいた。この場に集まった者たちが求めているのは、異議ではなく、問いそのものの共有であること。そして、その問いが、評価制度の一点に留まらず、研究という営為そのものの意味へと向かい始めていることを。

「まず、事実を整理してみませんか」と、別の誰かが提案した。その声は、議論の第一歩を踏み出す覚悟を含んでいた。

続きはまもなく

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