第7話
第7話 選択肢の幻影
「いいえ」のボタンが、微かに薄くなっていた。
いや、薄くなっているのではなく、見えなくなりかけているのだ。画面の端から中央へ、ゆっくりと色が褪せていく。あたかも、最初からそこに存在しなかったものとして、現実から消去されるように。
指は勝手に動いた。「はい」へ向かっている。自分で動かしているはずなのに、脳からの指令が数テンポ遅れている。思考と身体の間に、目に見えない何かが介在している。それは、アプリか。それとも、自分自身の一部か。
スマホが急激に熱くなった。手の平が焼けるような温度だ。だが離せない。画面から目も逸らせない。
タップの瞬間、視界が反転した。
目覚めた。いつもの寝室。天井のシミが見える。いつもの時間か確認しようと、時計に目をやる。
2時33分。
そして、枕の下から響く微かな音。バイブレーション。スマホは、自分で寝る前に枕の下に隠したはずなのに。
新しい通知が、暗闇の中で光っている。
「おめでとうございます。次の段階が開始されました」
続きはまもなく
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