第8話
軌道上の手紙 第8話 信号の正体
佐藤は受信記録を自分の端末に保存した。管制室の誰にも見られないようにしながら、新しいパケットを展開する。
データは画像ファイルだった。解析が進むにつれて、画面に映し出される。それは、火星の地表。探査機の着陸地点から数キロ離れた場所。岩石地帯に、何かが半ば埋もれている。
その形状に、佐藤は息を飲んだ。
人工物だった。機械のようでありながら、地表の風化による年月を感じさせる。プレートには、かつて誰かが刻んだと思わしき記号が。
次のパケットが到着した。今度はテキストデータ。佐藤は翻訳プログラムに掛けた。言語は判別不能。しかし、周波数パターンの変動から、佐藤は気付いた。これは言語ではなく、座標だ。
彼は計算を始めた。座標が指すのは、その岩石地帯のさらに奥。掘削が必要な深さ。
火星探査機のカメラが、意図的にその地点を記録していた。どの操作マニュアルにもない、予定にない動作で。
佐藤は椅子から立ち上がった。火星探査機は、ずっと何かを探していたのではなく、何かが探査機を動かしていたのだ。
管制室の壁の時計は夜間交代の時間を示していた。彼一人の目に触れたこのデータは、報告するべきか。それとも、まず自分たちが何を知るべきかを理解してからか。
佐藤は受信ログを見つめた。すべての異常は、その岩石地帯を指していた。火星の地下深くから、何百年も、誰かが信号を送り続けていたのかもしれない。
軌道上の手紙は、ようやく宛先に届こうとしていた。
(完)
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