第7話
第7話 信号の文法
佐藤は外部エネルギー検出装置のログを拡大した。ピークの形状は、ノイズにしては規則的すぎた。周波数帯を分析すると、複数の帯域が同時に反応していた。それは、何かが意図的に放射していた痕跡に見えた。
彼は呼吸を整えた。推測だけで報告すれば、機材の不具合で済まされるだろう。だが、この数値を見ている限り、それで納得することはできなかった。
佐藤は火星探査機の記録データベースにアクセスした。今回受信した予定外のデータパケット。その送信元を遡ってみる。形式上は探査機の内部から発信されている。しかし、実装されているはずのないプロトコルで暗号化されていた。
彼は画面の前で動きを止めた。
機体が自分で生成できないコードが、機体から送信されている。それは二つのことを意味していた。一つは、外部から機体のシステムに干渉されているか。もう一つは、機体に予期されていないプログラムが走っているか。
管制室の時計が、刻々と交代時間を示していた。
佐藤は別ラインで過去四十八時間のすべての受信ログを抽出し始めた。目に見える異常だけでなく、細かなタイムスタンプのズレ、通常と異なるレスポンス速度、わずかな電圧変動。つないでいくと、一本の糸が浮かび上がるかもしれない。
画面の右下に、新しい受信インジケータが点灯した。
火星からの信号が、また届いていた。今度は、より大きなパケットサイズだった。佐藤は受信記録を自動で開いた。データは例の謎の座標からのものだった。
その中身を見た時、彼は初めて声を出した。
「これは、返答だ」
誰にも聞かれない言葉が、管制室の静寂に落ちた。
続きはまもなく
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