締切の向こう側

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第一話 あと三日

朝の駅で、またスマホを落としそうになった。寝不足だ。昨夜も23時までプレゼン資料の修正をしていて、結局4時に寝た。配属されて三ヶ月。締切という言葉が、もう自分の人生の大部分を占めている気がする。

オフィスに着くと、机の上にポストイットが貼られていた。先輩の田中さんからだ。「10時に打ち合わせ。資料は9時半まで」。今は8時15分。あと45分で、昨日の修正を反映させて、プリントアウトして、製本して…。無理だ。絶対無理。

キーボードを叩く手が震えている。こんなことで震えるなんて。自分でも呆れている。でも止められない。締切が迫ると、脳が勝手にこのモードに入る。酸素が足りなくなったような感覚。

9時20分。なんとか完成した。走ってコンビニでホッチキス止め。戻ってきたら、田中さんが席にいた。

「お疲れ。ところで聞きたいんだけど」

僕は息を整えながら資料を渡した。

「締切って、何のためにあると思う?」

変な質問だ。仕事を期限内に終わらせるためじゃないか。当たり前だ。でも田中さんの顔を見ると、簡単には答えられない感じがした。

「え…?」

「いや、別に今答えなくていいんだ。ただ、君ずっと走ってるよね。見ててわかる。締切が来るたびに、青ざめて」

自分の状態が丸見えだったのか。恥ずかしい。

「それでね。締切ってさ、実は敵じゃなくて…」

そこで田中さんは言葉を切った。打ち合わせ室へ向かう時間だ。でも何か、その続きを聞きたい気がした。

帰りの駅で、またスマホを落としそうになった。でも今度は、少し違う疲れ方をしている気がした。

続きはまもなく

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