第7話
第7話 メモの循環
デスクの引き出しは、いつの間にか小さな情報交換所になっていた。
朝の体操に参加する人が増えるにつれ、デスク周りに置かれるメモの種類も増えていった。田中さんからの工夫、別部署の人が試した方法、さらには遠く離れた席の同僚が「これ効きました」と付箋で貼り付けていくもの。
肩の痛みという共通の悩みが、人と人を結ぶ糸になっていたのだ。
ある午後、パソコンの前で肩を回していると、見たことのない顔が声をかけてきた。
「あの、朝の体操に入ってもいいですか。実は三ヶ月前から肩が…」
その言葉に、自分は気づかされた。この流れは、もう個人的な工夫の範囲を超えていたのだ。
その夜、デスクの引き出しを整理していると、一通の社内メールが届いた。人事部からだった。件名は「健康推進プロジェクトについてのご相談」。
どうやら、朝の体操の様子が上層部の目に留まったらしい。メールの内容は、これを会社全体で推進する可能性についての打診だった。
画面を前に、自分は考えていた。あの最初のメモ、「肩よ、声を聞かせよ」という呟きから始まった小さな工夫が、今、もっと大きな形を求めつつあるのだ。
だが、ここからが本当の試練だと直感した。個人のレベルで続いていた営みが、組織の仕組みに取り込まれるとき、何かが失われる可能性もあった。
続きはまもなく
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