第7話
隙間を住まわせる
まだ開けられていない段ボール箱たちは、相変わらず倉庫の隅に積まれたままだ。最初の引っ越しの時なら、それは失敗と捉えていただろう。でも今、私はそれを別の形で捉えている。
完璧さへの執着を手放すと、不思議と見えてくるものがある。必要なものは必要な時に現れ、不要なものは段ボール箱の中のままでいい。そういう柔軟性が、暮らしに呼吸をもたらすのだ。
この部屋での三ヶ月目、私は「変わらないこと」にも気を配るようになった。朝日が当たる机の位置。夜、読書をする時の照明。これらは変えない。でも、その周囲には常に小さな調整の余白がある。
友人の「住んでる感じがする」という言葉を思い出すたびに、私は自分が何を手に入れたのかが分かる気がする。それは「完璧な部屋」ではなく、「試行と修正が許される場所」だ。
ノートのページは増えていく。配置の工夫だけでなく、季節ごとの変化、来客時との違い、自分の気分による選択肢。ルールと例外が共存する。どちらも同じくらい大切だということに、ようやく気づけた。
次の休日、私は倉庫へ向かうことにした。段ボール箱のいくつかを開けてみようと思う。何が入っているか確認して、この部屋に本当に必要なものを見分ける。その過程もまた、暮らしを整える作業なのだ。
続きはまもなく
目次