第3話
小さな一歩
翌週の金曜日、私は証券口座を開設していた。
申し込み自体は思ったより簡単だった。ネットで必要な情報を入力して、本人確認書類をアップロードして。でも口座が実際に使えるようになるまでの数日間、私は何度もスマホを確認した。本当にこれでいいのか。本当に始めてしまっていいのか。
会社では相変わらず、先輩には何も言わなかった。先輩だって「自分で調べて、自分で判断するのが大事」と言ったのだ。ここからは、私の決断だ。
ただ、決断するまでに、私が何度も立ち止まったことは確かだ。投資信託の商品を選ぶとき、月いくら始めるか決めるとき、本当に失敗しないのか確認するとき。情報サイトで「初心者向け」と書かれたものでさえ、専門用語ばかりで、読むたびに不安になった。
でも、同時に気づいたことがある。何もしないことの方が、実は大きなリスクなのかもしれない、ということだ。貯金だけで本当にいいのか。インフレのことを考えたら、お金の価値が下がるって、先輩の言葉は事実かもしれない。
口座が使える状態になった日、私は初めての金額を入金した。月給の一部。自分にとっては決して小さくない金額だった。
スマホの画面に、残高が表示された。それは同時に、新しい選択肢を手に入れた、ということの証でもあった。
ここからどうなるのか、誰にも分からない。損することだってあるかもしれない。でも、何もしない選択よりは、少なくとも自分の人生に向き合っている気がした。
週明けの昼休み、先輩に報告するかどうか、迷っている。
続きはまもなく
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