スポーツ推し部屋

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第7話

第7話 「推す」ことの意味

岡田の言葉が、主人公の中で何かをほぐした。

「スポーツ推し」。SNSでそう名乗り始めたのは、単に野球やバレーボールが好きだからだと思っていた。けれど今、改めて考えると、自分は何を推しているのか。

「スポーツ自体じゃなくて」と主人公は呟いた。「その中にある『個性』を推してるんだ。標準化されたルールの中で、それでも人それぞれ異なる在り方をしている選手たちを」

岡田が机の上のスケッチを指した。「アニメの製作現場では、キャラ設定という制約がある。でも優れたアニメーターは、その制約の中で、キャラクターの個性をさらに深掘りする。走り方一つで『このキャラはこういう人だ』と伝わるようにね」

主人公は頭を上げた。「フォロワーの質問に答えるときも、そこを見ていなかった。『このシーンの動きが自然なのはなぜか』という質問には、技術的な正解なんてないんだ。その動きを見て、何を感じたのか、その感覚を共有することが、推すことなんじゃないか」

岡田は作業机に戻った。「だったら今からでもできることがあるでしょう。あなたの推しるスポーツを、もう一度見直してみる。そして、フォロワーにもそれを伝える」

主人公はスマートフォンを手に取った。SNSには未回答のリクエストが数件溜まっていた。いつもなら、できるだけ早く「専門的な」回答を用意しようとしていた。

でも今、違う質問を想像してみた。もし自分が、逆の立場で何か聞くとしたら。答えを求めているのではなく、その人がどう『見ているのか』を知りたいのではないか。

工房の照明が、スケッチの影を濃くしている。複数の軌跡が、まるで踊るように見えた。

続きはまもなく

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