スポーツ推し部屋

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第6話

揺らぎの中にある真実

では、スポーツの現場で学んだことは、本当は何だったのか。

主人公は岡田の問いに、すぐには答えられなかった。工房の空気が静かになる。机の上には、複数のアニメーション資料が散らばっている。野球、バレーボール、陸上競技。どれも、スポーツ動作の「正確な再現」を目指すはずなのに、その途中で何かが起きている。

「実は」と主人公は言った。「スポーツ解説で『フォームが乱れている』と指摘することがあるんです。でも、その乱れの中に、選手の個性が出ている。同じ野球でも、ピッチャーごとに腕の下ろし方、軸足の置き方が違う。完璧に標準化されたら、むしろ不自然に見える」

岡田が頷いた。「それ、アニメーションでも同じです。キャラクターごとに、歩き方や走り方に癖があるんです。『正確さ』を唯一の指標にしてしまうと、その癖が『間違い』に見えてしまう」

主人公はスケッチに目を落とした。あの複数の軌跡を見ていると、段々と違う見方ができてくる。正確さと不正確さではなく、統計的な正しさと、個別の現象。パターンと個性。それらが混在する空間を、どう言葉にするか。

「SNSで『専門家的』に説明することばかり気にしていた」と主人公は呟いた。「でも、フォロワーの質問は別のことを求めているのかもしれない。アニメの動きを見て『なぜ自然に見えるのか』という違和感を、言語化してほしいんじゃないか」

岡田は笑った。「だからスポーツ推し、が必要だったんですね。ルール通りのことをするだけなら、アニメもスポーツも成立しないんです」

主人公の頭の中で、何かが回転し始めた。次の投稿内容が、ぼんやりと浮かんできた。ただし、正確な説明ではなく、むしろ疑問を形にしたものになるだろう。それが、果たしてフォロワーに響くのか。工房を出る前に、その問いを岡田にぶつけることにした。

続きはまもなく

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