第8話
第8話 朝5時の答え合わせ
田中は三つのタブを開きっぱなしにしたまま、席を立った。
朝食の片付けをしながら、妻と交わす何気ない会話。子どもを保育園へ送る道。いつもと変わらない朝だ。だが何かが違う。
昨晩、同僚は「副業で月に十万稼いでいる」と言った。その言葉が脳裏をよぎる。十万円。それを手にするにはいくつの案件をこなせばいいのか。データ入力なら三百時間。講師なら適切な条件が揃えばもっと効率的かもしれない。
帰宅後、田中は再びパソコンを開いた。三つのプラットフォームをあらためて眺める。
ライティングは実績がなくても始められそうだ。だが単価は低い。オンライン講師は報酬が良さそうだが、ハードルが高い。データ入力は簡単だが、時間対効果が悪すぎる。
「朝5時のサイドハッスル」という言葉が、急に重く感じられた。1時間では何もできない。毎日続けたとしても、成果が見えるまでには相応の期間が必要だ。
同僚の十万円には、彼の工夫と試行錯誤が隠れていたのだろう。田中はそこにようやく気付く。
翌朝、朝5時。田中は机に向かった。今度はプラットフォーム探しではなく、ライティング案件に取り組むことにした。時給三百円から始まる。それが現実だ。
窓外は未だ暗い。しかし田中の表情は、前日とは違う。"甘い話"を追うのではなく、地道に始まる何かを、彼は受け入れていた。
(完)
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