第2話
ルールを学ぶ
それでも、説明を聞きながらぼんやり思ったのは、これはゲームに似ているということだ。ルールを学んで、試してみて、失敗から学ぶ。僕は人生で何度もそれを繰り返してきた。
「では、どの商品からお始めになりますか」
窓口の女性の声に我に返った。一覧を見つめると、商品名の横に並ぶ数字たち。過去のリターン、信託報酬、純資産額。意味は分かりかけていたが、それでも選択肢が多すぎた。
「実は、決めるのに時間をもらってもいいですか」
帰宅後、山田にラインした。返ってきた返信は即座だった。
「そこだよ。焦んなって親父も言ってた。俺も三日悩んだ。でも逆に、どれ選んでもいいんだって気づいた。大事なのは始めることと、続けることだって」
スマートフォンの画面を眺める。銀行のアプリに表示されたシミュレーション画面。毎月三万円を三十年積み立てた場合、どうなるか。数字は右肩上がりを描いていた。ただし、グレーの帯がその周囲を取り巻いている。最大のリスク幅を示すものだ。
その夜、父に電話した。
「どれにしたの」
「まだなんです。種類が多くて」
父は笑った。
「そんなもんだ。でな、完璧な選択肢は存在しない。大事なのは、今の君が納得できるかだ。一度決めたら、あとは時間に任せてみる。そういうもんだよ」
翌週の月曜日、僕は再び銀行の窓口に向かった。持ってきたのは、迷いながらも自分で調べ上げた、たった一つの商品名。
「これでお願いします」
ボールペンが申込書を走った瞬間、何かが変わった。怖さと期待が同時に胸を満たした。
画面には「お申し込みありがとうございました」の文字。
続きはまもなく
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