第5話
第5話 何かが欠けている朝
四週間目の月曜日、目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた。いつもの朝と同じ時間。体が時刻を覚えている。白湯を用意して、朝日を待つ。隣家の前を通る人を数える。すべてが予定通りに進む。
なのに、その朝は違和感に満ちていた。
習慣は快適さをもたらす。同じ動作を繰り返すことで、余計な迷いが消える。けれど今朝、その快適さの中に、小さな空白が生まれていることに気づいた。何かが欠けている。何かが足りない。
カレンダーを見た。二十八日分の印がついていた。毎日を重ねることで、自分の中の何かが変わったのは確かだ。朝日の中で、昨日の疲労や今日への不安が色褪せて見えるようになった。その変化は本物だ。
だけど、変わることは、同時に何かを失うことなのだろうか。
キッチンで母と視線が合った。「朝が変わった」と言われたあの言葉を、もう一度思い出す。自分の中で起きている変化を、家族も感じている。その事実は、嬉しいはずだった。なのに、なぜ今朝は、その嬉しさの中に迷いが混じっているのか。
習慣が灯火になると思っていた。けれど、同じ光の中にいると、何が見えなくなるのか。その問いが、朝の白湯の湯気の中に揺らいでいた。
五週間目が始まろうとしていた。いつもと変わらない朝のはずなのに、今日は何かが、確実に異なっていた。
続きはまもなく
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