第3話
第3話 空白の時間
四日目の朝も、目覚ましより先に目が覚めた。
一週間が経つ頃には、この早起きは特別なことではなくなっていた。目覚まし時計を止めることさえ忘れて、自然に起き上がっている自分がいた。習慣とは、こういうものなのか。気づいた時には、すでに体の一部になってしまっているもの。
キッチンでの白湯の時間も、窓際での朝日を浴びる時間も、変わらないはずなのに、毎朝少しずつ質感が変わっていくような錯覚を覚えた。昨日と今日の違いを言葉にすることはできない。ただ、その違いを感じ取ろうとすること自体が、朝の時間を濃くしているのだと気づき始めていた。
二週間目に入ると、朝の五分が五分ではなくなった。白湯を飲む。窓を開ける。隣の家の前を通る人を数える。そうした動作ひとつひとつの間に、無数の時間が溶け込んでいるような感覚。
ある朝、鏡に映った自分の顔が違って見えた。特に変わったわけではない。同じ顔。同じ寝癖。なのに、目の奥の光が少し違う気がした。早起きで時間に余裕ができたからか、それとも毎朝同じことを繰り返すことで、何かが研ぎ澄まされていくのか。
その日、初めてこのルールを破りかけた。休日だからと、布団の中に留まろうとした。けれど、体が起きてしまった。習慣が体を支配しているのか、それとも、もう早起きが自分の一部になってしまったのか。起き上がりながら、その問いに答えが出ないことが、妙に面白かった。
毎日同じ時間に目覚める。その先に何が待っているのか、まだ見えていない。けれど、その先へ向かう道は、確かに出来上がりつつあった。
続きはまもなく
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