第6話
第6話 予定調和の破れ目
駅への道のりは、いつもと変わらない。だが、歩く速度が違っていた。急ぐ必要がないのに、足取りは軽い。朝日が背中を押している感覚だ。
会社に着くと、デスクの上に付箋が貼られていた。田中からだ。「今週末、朝活仲間で集まりませんか?」と書かれている。
朝活仲間。その言葉が、少し違和感を起こした。自分がSNSで見かけた、あの統一感のある朝の時間。朝焼けを背景に、読書している写真。ヨガマットの上での瞑想姿。みんな同じようなことをしていた。
だが、自分が毎朝やっていることは、ただお茶を飲むだけだ。それで良いのだろうか。
仕事中、その疑問は膨らんでいった。昼休み、SNSを開くと、朝活に関する投稿が無数に流れてくる。セミナーの案内、高級な朝食の写真、「人生が変わりました」というコメント。
何かをしなければ、という焦りが、胸の奥に這いはじめた。
帰宅後、田中に返信した。「集まりに参加したいのですが、何をするのですか?」
返ってきた返信には、「特に予定はありません。朝の空気を一緒に感じるだけです。変わったでしょう、あなたの朝が」と書かれていた。
ベッドに横たわり、天井を見つめた。朝が変わった。それは本当だ。だが、まだ何かが足りないような気がしている。
あるいは、その足りなさそのものが、大切なのかもしれない。
翌朝、五時のアラーム。いつものように目が覚めた。コップの水、洗顔、お茶。その流れの中で、ふと思った。
もし、このルーティンが破れたら、何が起きるのだろう。
続きはまもなく
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