第1話
第一話 通知
メールの件名は「評価面談の実施について」だった。
読み終わった瞬間、私は椅子の背もたれにもたれかかった。三月の評価面談に参加するよう、人事部からの連絡である。これ自体は珍しくない。だが、添付されていた資料に目を通すと、今年から新しい制度が導入されたことがわかった。被評価者も評価シートを事前に作成し、自己評価を行うというものだ。
正午、上司の田中さんから声がかかった。「評価面談について、何か質問ありますか」と、淡々とした口調で。
私は率直に答えた。「自己評価って、どの程度の詳しさで書けばいいんでしょう」
「そうですね。一般的には、過去一年の実績、工夫した点、課題だと感じたことを整理するといいですよ。別に完璧である必要はない。むしろ、自分の仕事をどう見ているか、それが重要なんです」
その言葉が妙に引っかかった。評価面談というと、一方的に評価される場だと思い込んでいた。だが、田中さんの話を聞いていると、そうではないのかもしれない。
帰路のバスの中で、スマートフォンのメモアプリを開いた。過去一年、何をしたのか。営業成績の数字ばかりが浮かぶ。だが、それだけが仕事ではないはずだ。プロジェクトで後輩にアドバイスをしたこと、取引先との信頼関係を構築するために工夫したこと、そうした目に見えにくい部分もある。
しかし、それらをどう言語化すればいいのか。自分の仕事を客観的に評価することの難しさが、ようやく実感できた。
帰宅してから、PCを立ち上げた。評価シートを眺める。記入例として示されたテンプレートは親切だったが、それに沿って書くだけでいいのかという疑問は消えない。
三月の面談まで、あと三十日。その間に、自分がこの一年で何をしてきたのか、きちんと向き合う必要があるのだと、ようやく気づき始めていた。
続きはまもなく
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