第7話
第7話 判断の重さ
色々読んだけど、何が大事なのか、まだよく分かりません」と田中は正直に答えた。
佐藤は席に戻るよう促し、昼休みの終わりまでに一冊の書籍の写真を田中に送ってくれた。タイトルは『長期投資の考え方』。ページの一部には、佐藤自身が手書きした付箋が貼られていた。
「全部読まなくていい。まずは第三章だけ。『感情と判断』の部分」
仕事の合間に目を通した田中は、そこに書かれていた一節に目が留まった。市場は常に変動するもの。その変動に一喜一憂することは、投資ではなく投機だという主張だ。ただ、その違いを理解することと、実際にそれを実行することは別だと感じた。
帰宅後、田中はアプリを開くことをしばらく控えることにした。基準価額を確認するたびに、感情が揺さぶられるのを自覚していたからだ。代わりに、投資信託の仕組みについて、より体系的に学ぶことにした。分配金とは何か。リスクとリターンの関係とは何か。一つずつ、丁寧に。
一週間後。重い足取りで再びアプリを開いた時、基準価額は買った時よりも上がっていた。その時、田中は気づいた。上がったことよりも、下がった時との心の持ちようの違いに。
佐藤への報告は、いつもと違う質問で始まった。「これって、運ですか?」
「いいえ」と佐藤は笑った。「君の判断ですよ」
続きはまもなく
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