第3話
第3話 出社予定なし
画面を見つめたまま、俺は動けなかった。
『本日の出社予定なし』
昨日、今日の出社申請を出したはずだ。営業資料も印刷するために早めに来たのに。だが、スケジュール表示は変わらない。
会議室の景色が戻ってくる。部長の姿も、もう一人の俺も消えている。ただ長いテーブルと、灰色の壁だけ。
俺は廊下に出た。時計は朝7時20分を指している。朝礼は30分後だ。だが、廊下は静寂に包まれている。営業フロアの方から、人の声は聞こえない。
デスクに戻ると、やはり誰もいない。自分のチェアには、ほこりが積もっている。それなのに、画面をつけると未読メールが50件以上。全て、ここ3年で送られてきたものだ。
―「明日の会議に出席してください」
―「プロジェクトの進捗報告をお願いします」
―「チームランチの時間が決まりました。参加者を集めます」
全て返信なしのまま。
携帯を握りながら、俺は考えた。数字は上がった。その報告も全てメール。画面越しに成果を証明した。だが部長は言った。この部署にいないことが問題だと。
そして、もう一人の俺は毎日ここに来ていた。
足音がした。誰かが来る。俺は身を引き締めた。もう一人の俺だろうか。それとも他の誰かか。
角を曲がると、営業部長がいた。だが彼の目は俺を通り抜けている。部長はデスクの向こう側に座っている男に声をかけた。それは、もう一人の俺の姿をしている。
「おはよう。昨日の昇進試験の結果が出たから、後で話そう」
もう一人の俺が笑顔で返事をする。
俺は立ち上がった。声を出そうとしたが、音が出ない。もう一度試すと、今度は音が出ない理由がわかった。
自分の両手が、透き通り始めている。
携帯の画面を見る。スケジュール表示は変わらない。
『本日の出社予定なし』
続きはまもなく
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