第2話
昇進の話
会議室に入ると、部長が俺たちを見て眉をひそめた。
「おい、何やってんだ。朝礼は別室だろう」
もう一人の俺が頭を下げた。
「申し訳ありません。ちょっと案内してました」
部長はため息をついた。
「お前、3年間何やってた。昇進の話をするのに、こんな基本的なこともできないのか」
部長が指差したのは、もう一人の俺だった。
「え?」
「お前のリモート勤務。数字は上がってるが、この部署にいないことが問題だ。昇進させるわけにはいかん」
そう言うと、部長はもう一人の俺に視線を移した。
「君だ。毎日ここに来て、同僚との関係も築いてる。チームプレイができてる。昇進試験を受けてみないか」
もう一人の俺の顔には、俺が知らない笑顔が浮かんでいた。
俺は部長に言葉をかけようとしたが、その時だった。
もう一人の俺が俺の方を向いて、何か言いかけた。その瞬間、彼の姿がちらつき始めた。
「あ、まずい」
もう一人の俺がそう呟いた時、部長の顔がぼやけ始めた。会議室の景色も、薄れていく。
俺は床に落ちていた携帯を拾った。画面には、スケジュール表示が出ていた。
『本日の出社予定なし』
奇妙な違和感が、俺の中に残っていた。
続きはまもなく
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