第8話
痕跡が紡ぐ道
駅に着く手前、スマートフォンの画面を見直していた。朝に撮った写真、昼休みの問題、夕方の解き直し。三つの時間帯で同じテーマに向き合った痕跡が、ホーム画面に並んでいる。
「その勉強法、いいですね」
隣に座っていた人が、ふと声をかけてきた。同じ資格を目指す知人だった。写真に写った走り書きと、その積み重なり方を見ていたらしい。
「計画通りにいかないことばかりなんです」と応じると、その人は笑った。「計画って、その時点での予想に過ぎないんですよ。大事なのは、実際に何をしたかじゃないですか。あなたはそれを残している。それが、一番の証拠だと思います」
言葉は単純だった。だが、それまで自分が無意識に積み重ねてきたことが、ようやく言語化された気がした。
完璧な計画を立てることより、不完全でも動き続けること。毎日の小さな痕跡を信じること。その痕跡たちが、いつのまにか道を作っていくこと。
電車が駅に停まった。降りながら、ポケットの中のノートに手が向かった。あした朝、また何かを書きつけるはずだ。完璧さなんて目指さず、ただ痕跡を重ねていく。その営みの中に、学びの本質があるのかもしれない。
夜の駅前を歩きながら、不思議と焦りが消えていた。計画に縛られず、痕跡に導かれる。その自由さが、勉強を続ける力になっていることに、やっと気づけたのだ。
(完)
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