第3話
同じ道の別の見方
翌朝、いつもより早く目を覚ました。
窓を開けると、空気がまだ冷たい。季節が確実に移ろっている。自転車に乗るとき、ジャケットの厚さを調整する。毎日の小さな判断だけど、今朝はそれすら意識的に感じられた。
通勤路に出る。いつもの街並み。でも昨日と違う光の当たり方。街路樹の葉が、昨日より少し落ちているような気がする。そうした細かな変化に気づくようになったのは、いつからだろう。
あの人のビンテージな自転車は、今朝も現れなかった。
でも、別のものが目に入った。毎日通ってるのに、今まで見落としていた小さな花屋。シャッターが上がる時間帯だったのか、初めてその中を見た。季節の花が並んでいる。秋の深まりを告げるような色合いで。
会社に着いても、その花屋のことが頭にあった。
帰り道、もう一度その前を通った。同じ時間でも、光が違った。午後の陽射しは朝と別の表情をしていた。相手はいなくても、景色は毎日変わってるんだ。そんなことに気づくのに、こんなにも時間がかかるなんて。
翌々朝、自転車に乗る前に、少し違う準備をした。スマートフォンで、この季節の街の変化について、何かメモしてみようかと思った。あるいは写真を撮ってみるとか。
そうしていたら、偶然が舞い込んでくるのか、それとも自分から何かが始まるのか。
まだ、分からない。でも確かに変わってきた。毎日同じ道を走ってることは変わらない。けれど、その道の見方が、確実に変わり始めている。
続きはまもなく
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