第2話
いつもと違う景色
駅に着いても、あの人のことが頭から消えなかった。
改札を通って、いつもの階段を上って、ホームに出る。乗り慣れた電車に乗って、窓の外を眺める。毎日同じ景色なのに、今日はどれも新鮮に見えた。朝日の角度が違うのか、それとも自分の気分が変わってるだけなのか。
会社に着いても落ち着かなかった。デスクに座ってパソコンを開く。メールをチェックして、朝の会議の資料を確認して。いつもの流れなのに、頭の片隅であの自転車のことを考えてた。あのビンテージな感じ、丁寧に整備されてる様子。誰がそんなふうに乗ってるんだろう。
昼休み、同僚たちと一緒に食堂に行った。でも会話が耳に入ってこない。無意識に、明日の朝のルートのことを考えてた。もしあの人がまた来たら。また見かけたら。そしたら、今度こそ何か言葉を交わせたら──。
そんなことを考えてるなんて、自分でも驚いてた。毎日同じ道を走ってるのに、ずっと何も感じてなかった。それなのに、たった一度のすれ違いで、こんなに心が動くなんて。
夕方、同じ道を自転車で帰った。帰り道には、朝とは違う人たちがいた。サラリーマン、OL、学生、子ども連れ。いつもの顔ぶれ。あの女の人は見当たらない。当たり前だ。朝と同じ時間に同じ方向に走ってるはずがない。
ペダルを踏みながら、ふと気づいた。自分は何を待ってるんだろう。明日の朝が来ることを。あるいは、また何か違う景色が見えることを。
秋の夜気が心地よかった。いつもと同じ道だけど、もう少し違う角度で見えてる気がした。
続きはまもなく
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