チェーンとコンパス

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第1話

第一話 いつもの朝

朝6時半。いつもの時間に玄関を出た。自転車を立ち上がらせて、ペダルを踏む。この道もう何年だろう。家から駅まで、同じ曲がり角、同じ信号、同じ景色。退屈っちゃ退屈だけど、その退屈さが心地よかったりする。朝の脳には、考えなくていい単純さがちょうどいい。

今朝は特に気持ちのいい天気だった。秋なんだなって思う。空気が違う。いつも急いでるから気づかないけど、ゆっくり走ってみると、沿道の小さな店の看板が新しくなってたり、植え込みの色が変わってたり、そういう細かいことが見える。

いつもの交差点で止まった。赤信号。ここで毎回、同じ時間に同じ人たちとすれ違う。サラリーマンおじさん、ランニング中の女の人、時々野球の練習着姿の学生。今朝も来るのかなって思ったら、見たことない人がいた。同じくらいの年代の女の人で、ビンテージっぽい自転車に乗ってた。かなり古い型の。整備されてるのかな、光ってる。

目が合った。ほんの一瞬だけど。青信númしたからペダルを踏んだ。いつもより少し速く。なんか、妙だった。昨日までと同じはずの朝なのに、何かが違う感じがした。

ペダルを回しながら考える。あの人、ここ住んでるのかな。それとも別の場所から来てるのかな。毎日自転車で同じ道走ってるけど、こんなことで気になったことない。退屈な日常の中で、小さなズレが生まれた感じ。その感覚、嫌じゃなかった。むしろ、ちょっと好きかもって思った。

駅に着いた。自転車を停めて、スマホを出す。いつもの日常、いつもの朝。でも何かが始まる予感がした。明日の朝、あの人に会うかな。そんなことを考えながら、駅の階段を上った。

続きはまもなく

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