まっしろな資産簿

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第8話

白い頁に記す、これからのこと

決めたその日から、二週間が経った。

アプリを開く習慣は変わらない。ただし、主人公が見つめるのは数字そのものではなく、その背景にある時間だった。プラス412円。プラス1840円。マイナス560円。

どれも、自分が選んだ判断の結果だ。

昨晩、給与口座に初めてのボーナスが振り込まれた。数字を眺めたとき、思ったより複雑な感情が湧いた。嬉しさもあれば、責任感も。投資信託を始めてから、お金を見る視線が変わっていた。

「今月も確認の時間ですか」

月末の夜。橋本との定期的なLINEでのやり取りも、いつの間にか習慣になっていた。返信は即座に来た。「そうですね。どうですか」

主人公は率直に返した。「プラス2692円です。十分です」

これまでなら、もっと利益を求めていたかもしれない。だが今は違う。小さな利益であっても、それは自分が納得した判断の証。その方が、心が落ち着く。

橋本からの返信。「実はね、投資で一番大事なのは、増やすことじゃなくて、続けることなんですよ。多くの人は、派手な利益を期待する。でも、それって宝くじと一緒です。僕たちがやってることは違う。毎月、淡々と。自分のペースで。その中に、本当の価値がある」

スマートフォンを置き、主人公は机の角に置いてある白いノートを手に取った。三つのルールの下に、新しく一行加えた。

『毎年の終わりに、一年を振り返る』

まだ投資信託の世界に入ったばかり。これからも失敗するだろう。心が揺らぐ日もある。だけど、ルールがある。自分で決めた道がある。

主人公は、再びアプリを開いた。プラス412円。その静かな数字が、今はとても美しく見えた。

(完)

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