第5話
記録と忘却のあいだで
青いノートを久しぶりに開いたのは、その葛藤の最中だった。
机の引き出しから取り出してみると、これまで三冊分の読書記録が詰まっていた。走り書きのメモ、行き来する矢印、ページ番号、疑問符。それらを眺めていると、自分がどれほど必死だったのかが伝わってきた。だが同時に、それが本当に役に立っていたのかも曖昧に感じられた。
先輩の言葉を改めて考えてみる。「ノートはきっかけに過ぎない」。では、きっかけとは何か。道具なのか、習慣なのか、それとも自分の心の状態を映し出すものなのか。
あの本の続きを読みたい気持ちと、記録すべきかどうかの迷いが同時に存在していた。どちらかを選ぶのではなく、両者の関係を改めて問い直す必要があるのではないか。ノートを取ることが読書を浅くするのか、それとも自分の使い方が問題なのか。
窓の外は夜になっていた。手には青いノート。その隣には、帯がまだ巻いてあるままの本が置かれている。どちらを先に手にするか。その選択が、読み手としての自分を少しずつ形作っていくのだろう。
ただ、今は迷いながら進むことの方が、記録することより大切な気がしていた。
続きはまもなく
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