第4話
小さなメモの重ね方
手書きのメモは、いつの間にか十枚を超えていた。
「この野菜は硬いので、早めに入れる」「この組み合わせは、塩加減が難しい」「朝の忙しい日は、前夜に下ごしらえ」。気づいたことを、思いついたまま書き留めておくその習慣。最初は、レシピサイトの補足くらいのつもりだった。でも今では、そのメモこそが、自分の味噌汁の教科書になっていることに気づく。
メモを見返すたびに、その時々の試行錯誤が蘇る。失敗した日のこと。新しい野菜を入れすぎた日のこと。逆に、うっかり発見した良い組み合わせ。そういった一つ一つの経験が、文字になって残っているのだ。
ある朝、いつものように引き出しを開けると、メモの隣に、新しい野菜が目に入った。何度か市場で見かけていたけれど、まだ試したことのない種類だ。その野菜をどう調理するか。どの食材と合わせるか。手が動く前に、ちょっと考える時間ができた。
そして、その考える時間こそが、毎日の自炊を続ける力になっているのだと改めて感じた。完璧さを求めるのではなく、その日その日の「どうしようか」という迷いを大事にすること。そこには、退屈さの入り込む隙間がない。
メモを一枚、新しく用意した。今日の味噌汁に、この野菜を入れたら、どんな物語が生まれるだろう。
続きはまもなく
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