締切の向こう側

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第7話

確認という名の投資

最初の十日間で「何を作るべきか」を徹底することは、後の修正地獄を防ぐ最良の投資だと、デザイナーは腑に落ちた感覚を覚えていた。

だが、その考えは午後三時に揺らぐことになった。

クライアント側からメールが届いた。件名は「ペルソナ資料について」。添付ファイルは三つ。顧客インタビューの記録、購買決定プロセスの分析、そして意外なことに、実際のターゲット層による商品レビューの集約だった。

デザイナーは資料を読み進めた。仕様書の「統計データ」には見えなかった、ある傾向が浮かび上がってきた。数字の背後にある、顧客たちの本音。彼らが本当に求めていることと、企業が提供しようとしていることのズレ。

電話で確認を取ったあの十分間がなければ、デザイナーは自分の理解で案を進めていただろう。仕様書に従い、効率的に。そして、完成後に初めて「ここが違う」という指摘を受けることになったはずだ。

スマートフォンを置いて、デザイナーは天井を見つめた。

締切に追われることは変わらない。納期も変わらない。ただ、「何を作るか」という根拠が、今は確かに存在している。それは、これからの作業を変えるだろう。修正の回数も、やり直しの疲弊感も。

キーボードに手を置きながら、デザイナーは考えた。効率と信頼。すべてを同時に満たすことは難しい。だが、どちらかを完全に諦めることもできない。その葛藤の中で、本当の仕事が始まるのだと、今ようやく理解できた気がした。

続きはまもなく

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