ハイライトの向こう側

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第3話

ツールは問いの鏡

「新しい運用方法」とは、曖昧な言葉だった。企画会議での説明を聞いていても、誰も本当には何を求めているのか明確にしていないように見えた。

従来のデジタルツール導入は、業務の効率化が目的だった。入力項目を増やし、検索機能を充実させ、クラウドで共有する。その繰り返しだ。だが、実装するたびに現場からの不満は減らなかった。

読書メモの試行から二週間。俺は気づき始めていた。問題は「ツールが不足している」ことではなく、「何を記録すべきか」という問い自体を、ツールが奪い取っていたのではないかということに。

アプリを使っていた時期は、ハイライト機能で自動的に重要な箇所が色分けされた。だが手書きメモの時代は、自分が「なぜこれを書いたのか」を後から問い直すプロセスが生まれていた。そこに思考があった。

会議から戻った席で、俺は上司に提案書を出した。

「新しいツールを作るのではなく、ツールを『考えるための対象』に変えませんか」

彼は眉をひそめた。

「ツールは道具だろう。考えるためのものじゃなくて」

「そこなんです。ツールが『何を記録すべきか』を決めてしまうから、ユーザーは思考をやめるんです。逆に、ツールの制限や不便さを『問い』として提示できれば、使い手がそれに答える過程で思考が生まれる」

年上のエンジニアの言葉が頭をよぎった。何を忘れるかが見える、と彼は言った。では、ツールで何が記録されないのかに注目すれば、本当に必要な運用が見えるのではないか。

その夜、俺は実装案を書き始めた。完全に効率的なシステムではなく、あえて隙間を残すツール。ユーザーが「これはどう扱えばいいのか」と問い、その過程で業務の本質を問い直すような仕組み。

これが通るかどうか、まだ分からない。だが一つだけ確信があった。

デジタルとアナログの融合とは、二つのツールの長所を足すことじゃない。ツール自体が、使い手に何かを問い続ける状態を作ることなのだ。

続きはまもなく

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