第7話
判断の先送り
翌朝も、田中は同じ電車に乗った。あの本はカバンの中にはなく、デスクの片隅に戻していた。
昨夜、田中は家に帰ってから、机の周りを改めて見つめた。積み重ねられた本、引き出しに詰め込まれた資料、使わなくなった文房具。田宮の言葉が頭から離れなかった。「その時になってみないとわからない」。
本当にそうなのか。それとも、それは判断を先送りにするための理由づけなのか。
電車の中で、田中は窓に映る自分の顔を見つめた。疲れているように見えた。あの本の著者は、ものを手放すことで心が軽くなると書いていた。しかし田中が感じていたのは、選択することの重さだった。
駅に着き、会社へ向かう通路で、田中は立ち止まった。横の壁には、社員募集のポスターが貼られている。新しいプロジェクトが始まるという告知も見える。会社も常に変わり続けている。それなのに、自分のデスクの上は、変わらないままだ。
席に着くと、また同じファイルが目に入った。今日こそ、何かを判断しようと思った。しかし、判断するためには、まず何が本当に必要なのかを知らなければならない。その問いに、まだ答えは見つかっていなかった。
昼休み、田中は図書館へ向かうことにした。あの本の続きを読みたいわけではない。ただ、同じ悩みを持つ他の誰かが、何を書いているのかを知りたかった。
続きはまもなく
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