小さな引っ越し術

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第3話

デジタル化する生活

田中の質問に答えるため、僕はノートパソコンを開いた。

「実は、引っ越しの三ヶ月前から準備してたんだ。まず、紙の書類をすべてスキャンした。銀行の通知、契約書、保証書。スマートフォンのアプリで一枚ずつ撮影していく。クラウドストレージに保存しておけば、どこからでもアクセスできる」

田中はディスプレイを覗き込んだ。

「次に、衣類は本当に必要なものだけに絞った。季節ごとに着回せる色を意識して。僕の場合、スーツケース三個に収まる分量だ。もう、新居に着いたら干すだけ。タンスは買わない」

「本は」と田中が指した。窓辺に積み重ねられた数冊の本について聞いていた。

「これらは何度も読み返すやつだけ。それ以外の本は電子版を使うようにした。荷物にならないし、検索も楽だ」

パソコンの画面を切り替えると、クラウドストレージのフォルダ一覧が表示された。生活に必要な情報がすべて、数ギガバイト以内に収まっている。

「ただ、完全にデジタル化するのは難しかった」と僕は続けた。「紙の本を手に持つ感覚とか、実物を前にしたときの判断力とか。そういう部分は、やっぱり残す必要があった」

田中は椅子に座り、深く考えるような表情になった。彼も転勤族だ。毎回、段ボール箱に人生を詰め込み、新居で開ける苦労を知っている。

「でも、これって正解ってわけじゃないんですよ」と僕は付け加えた。「人によって、必要なものは違う。僕の場合たまたまこれが機能しただけで」

その時、部屋の隅に置いたスーツケースの一つが目に入った。その中には、実は思い出の品が詰まっている。デジタル化できない、デジタル化すべきではない、そういう物たちだ。

「次の引っ越しで、これがどう変わるか。それがまだ分からないんです」

田中は頷いた。彼の目には、何か別の可能性が映り始めているように見えた。

続きはまもなく

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