小さな引っ越し術

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第1話

第一話 段ボール箱との別れ

また引っ越しか。三年ぶり、五度目の引っ越しである。

不動産の契約書にサインするまでの間、僕は例のごとく絶望していた。段ボール箱。あの茶色い悪魔たち。前回の引っ越しから三年、クローゼットの奥には圧縮されないまま積み重ねられた段ボールが眠っている。その数、推定二十個。

エンジニアとしてのプライドがあるなら、こんなアナログな方法は卒業すべきじゃないか。その晩、僕はスプレッドシートを開いた。

所有物をカテゴリ分けし、重量と体積を推定し、引っ越し費用との相関を計算する。結果は明白だった。全荷物の三割は、引っ越しの手間とコストを考えたら処分する方が理にかなっている。

さらに気づいたことがある。引っ越し業者の見積もりって、段ボール箱の数で決まることが多い。つまり、小さく、少なく、という思考そのものが、コスト削減に直結するということだ。

スーツケースを引っ張り出した。キャリーバッグ三個に、衣類と日用品を詰める。書籍は全てKindleに移行する。家具は新居で調達する。デジタル化できるものはクラウドに移す。

それは、単なる引っ越しの効率化ではなく、生活そのものの再設計だった。

新しい部屋のカギを握りしめながら、僕は思った。今度こそ、段ボール箱からの解放だ。

続きはまもなく

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