第7話
第7話 白紙の夜明け
ノートもウォッチも、結局どちらも触らなかった。
夜、布団に入る直前、スマートウォッチを外す手が止まった。外さなくてもいい。でも今夜はつけたままでいよう、そう決めた。ノートは手に取らない。記録も評価もしない。ただし禁止もしない。選択肢を開いたまま、何もしないことにした。
この曖昧さの中で、初めて眠気が来た。
夜中、目覚めることもあった。従来なら「中途覚醒」とカテゴライズし、朝に数値を確認していただろう。今は目覚めたことさえ記憶から落とした。ただ、また眠くなるまで天井を見ていた。その時間が無駄だと感じなかった。むしろ、そこに何の名前もついていない状態が、妙に心地よかった。
翌朝、目覚めてからの問いかけがなかった。昨夜はどうだったか、という評価の声が頭に浮かばなかったのだ。代わりに、ただ起きた、という事実だけがあった。
スマートウォッチの画面を見た。睡眠スコアは表示されていた。しかし、それを確認する意味を自分に問い直すのをやめた。数字は数字。それ以上でも以下でもない情報。それなのに、なぜ安心感を求めてしまうのか。その謎はまだ残っている。
だが、その謎と一緒に眠ることなら、できそうだ。
同僚との昼休みの会話で、こぼれた言葉がある。「最近、寝つきがマシになった気がする」。理由を聞かれて、自分は笑うだけだった。説明するのはやめた。データも言葉も、その体験を完全に説明することはできないからだ。
もしかして、それが今、自分に必要だったのかもしれない。説明できない時間の許容。
続きはまもなく
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