スリープハック・ダイアリー

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第6話

第6話 空白と静寂

何も書かないことにした、その決断は予想外に重かった。

ノートを閉じて、スマートウォッチも外した。寝る前の儀式をすべて手放すのは、崖から飛び降りるような感覚だった。これまで三ヶ月、何らかの記録がなかった夜が存在しない。数字も言葉も、何もない状態で眠りに入ることがどういうことなのか、もう思い出せない。

実際には思い出したくなかった。そのことに気づくまでに、寝床で三十分を費やした。

翌朝、目覚めた時点で「昨夜をどう評価するか」という問いが頭に浮かばなかった。それは開放感というより、むしろ居心地の悪さに近かった。良かったのか悪かったのか、その判定をしないまま日中を迎えるのは、自分の人生に隙間が生じているようで不安だった。

同僚のメールを見て、ふとスマートウォッチを手に取る。画面を見た途端、落ち着きが戻った。心拍数、深い睡眠の時間、睡眠スコア——すべてが視覚化されていた。「悪くない」と判定されていた。

この安心感の正体は何か。データが信頼できるからではなく、説明責任から解放されたからなのか。あるいはその逆か。

昼間、何度も同じ問いが循環する。数字に頼るな、と決めたはずが、手放せない。言葉で記述しろ、と試みたら、言葉にも支配されていた。では、どうすれば。

ノートはデスクの上に置いたままだ。スマートウォッチも腕にある。どちらかを選ぶのではなく、どちらでもない状態を保つ方法があるのか。あるいは、その問い自体が、僕をまた別の罠へ導いているだけなのか。

晩方、同僚に「最近どう。睡眠」と聞かれた。答えが出なかった。

続きはまもなく

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