第8話
親に説明できる選択
翌週の日曜日、実家で母を前にして改めて話し始めた。
「投資信託について、ちゃんと説明したいんだ」
母は目を丸くしたが、静かに聞く姿勢を見せた。
自分がどの商品を選んだのか。手数料がどの程度かかるのか。なぜ長期運用が必要なのか。リスクをどう捉えているのか。一つひとつ、自分の言葉で説明した。完璧ではなかった。いくつかの質問には「まだ調べ途中です」と正直に答えた。
だが、その過程で気づいたことがあった。投資信託は難しい『制度』ではなく、自分の将来への『選択』なのだということだ。説明できないことは、その選択に確信がない証拠。だから調べ続ける必要がある。完全に理解する必要はないかもしれない。ただ、自分で判断できる状態であることが大切なのだ。
母は最後に言った。「よくわかんないけど、あんたが考えてるなら、応援してるよ」
その言葉で、何かが腑に落ちた。
翌日、田中に報告すると、彼は笑って頷いた。「いいんじゃないですか。完璧を目指さなくていい。ただ、自分の決断に責任を持つ。それだけ」
月給25万円。決して多くない金額だ。だからこそ、その使い道は慎重に選ぶ必要がある。投資信託も、貯金も、今を楽しむことも、全部が『選択肢』だ。
給与明細を眺めるときの心持ちが、少し変わった。もう不安に駆られて調べているのではない。自分の将来について、主体的に考えるようになったのだ。
難しさは残る。でも、その向こう側に自分の人生がある。そう思えるようになった。
(完)
目次