スクリーンの向こう側

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第2話

測定される日々

プロジェクトの初日、田中のメールには細かなアンケートが添付されていた。「業務開始時刻」「集中力の自己評価」「中断回数」「成果物の完成度」——項目は三十を超えていた。

同じチャンネルには、他のメンバーからの質問が続いていた。営業部の鈴木は「リモートだと営業電話の時間をどう記録するんですか」と聞いていた。企画部の山本は「成果物の完成度って、誰が判定するんですか」と返していた。佐伯からの返答は、やはり曖昧だった。

月曜の朝、田中はいつもより十五分早く机に向かった。計測が始まることを意識した時点で、行動は変わる。その自覚が、彼の思考を占めた。

オフィスにいた時代、朝礼の時間は何をしていたか。メールを確認し、コーヒーを飲み、同僚と雑談して、九時半過ぎに業務が始まる。その時間も生産性に含まれるのか、含まれないのか。そもそも、その区切り方自体が恣意的ではないか。

昼休みに、田中は同じプロジェクトに参加している企画部の山本と、チャットで少し話した。「何か変な感じですよね」と山本は書いていた。「見張られてる気分というか」。田中は返信に三分考えた。返信は送らなかった。

三日目、ファシリテーターの佐伯から、各メンバーへの個別面談の予定が届いた。田中は金曜日に設定されていた。それまでに、自分の数値は何を物語るのか、彼は推測した。Slackの返信時間は早い。メールの返信率も高い。レポートの提出も期限内。しかし、その先にあるものは何か。

木曜の深夜、田中は月曜から木曜までの自分のログを眺めていた。業務時間の開始と終了、中断の数、集中力の自己評価の推移。グラフは上下していた。それは自然なことのはずだった。しかし、グラフとして見えた時、その上下はまるで問題のように見えた。

金曜の面談で、佐伯は穏やかに言った。「興味深いパターンですね。あなたのデータを見ると、午後二時から三時の間に、集中力が大きく下がっています」。田中は返答した。「その時間は、大体会議が入っています」。佐伯は頷いた。「では、会議がなかった日のデータを見てみましょう」。

その先の会話の中で、田中は気づき始めた。測定すること自体が、すでに何かを変えているということを。

続きはまもなく

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