気象予報士・朝日の事件簿

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第1話

第一話 数字が嘘をつく日

朝日が気象庁のデータセンターに配属されて三ヶ月目のこと。毎朝、前日の気象データをチェックするのが日課だった。温度、湿度、気圧、風速——それらの数字は正直で、矛盾しない美しい言語だった。

その日も平凡に見えた。関東地方の昨日のデータを眺めていると、ふと違和感が。午後三時の気温が32.8度、湿度が68%なのに、同時刻の露点温度の計算が合わない。誤差の範囲じゃない。明らかにズレてる。

朝日は隣の席の先輩・田中に声をかけた。「あ、これ見てもらえます?」

田中は眼鏡を上げて画面を覗き込んだ。そして、妙な顔をした。「うーん。入力ミスじゃないかな」

だけど朝日の直感は何かを感じていた。この矛盾は、単なるオペレーションエラーじゃない気がする。気象データって、基本的に自動計測だから、人為的なミスって意外と少ないんだ。

その晩、朝日は過去のデータをたどってみた。すると、同じパターンの矛盾が、毎月一度は現れていることに気づく。決して目立たない、でも確実に存在する歪み。

なぜこんなことが?

翌朝、朝日は上司に報告した。上司は最初、取るに足らない件だと考えていた様子だった。でも朝日が淡々と矛盾の事例を並べると、表情が変わった。「これ、本当か」

数日後、調査が始まった。気象データなんて、日常の天気予報には欠かせない。もし、そこに意図的な改ざんがあれば——朝日は、自分が何かとんでもない扉を開けようとしているような予感がした。数字は嘘をつかないはずだった。でも、その嘘を作る人間がいるなら?

続きはまもなく

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