第2話
二度目の朝
二日目の朝、目覚まし時計が鳴る前に目が覚めた。窓の外はまだ薄暗い。昨日と同じ時間帯だ。自転車通勤が習慣になるには早すぎるはずなのに、体が覚えている。その事実に少し驚いた。
朝食を済ませ、アパートを出る。自転車は玄関脇に立てかけてある。昨日より自然な動きで乗ることができた。ペダルの重さ、ハンドルの握り具合。一度の経験でも、体は学んでいるのだと感じた。
同じ裏通りを走る。だが、昨日と全く同じ景色ではない。昨日は閉まっていた花屋が、この時間には開いている。軒先に出された鉢植えが、朝日を受けていた。年配の女性が水をやっている。どうということもない光景だが、昨日はここにいなかった。同じ時間に同じ道を走っても、世界は毎日違う。その当たり前のことが、今朝は新鮮に思えた。
信号で止まった時、昨日と同じ位置のビルを見上げた。窓の明かりはもう消えている。仕事が終わったのか、あるいは別の日時に別の誰かが明かりをつけているのか。確認する術もない。だが、その不確かさがいい。知らない街の、知らない人間の営みの一片を想像する。電車では決してしなかった思考だ。
会社に到着するまであと二キロ。走りながら、昨日と今朝の違いを数えてみる。それは単なる風景の違いではなく、自分の中で何かが変わりつつあることを示唆していた。毎日同じ道を走ることの意味が、徐々に見えてくるような気がした。
続きはまもなく
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